30年以上前の記録に迫る歴史的勝率
ソフトバンクの強さが尋常ならないレベルに達している。現在の勝率は.679(8月31日終了時点)。パ・リーグでこれを上回る勝率を残したのは、30年以上前、1983年の西武(勝率.683)にまでさかのぼる。過去、その西武以上の勝率を残したチームは3つあるが、それらは全て1950年代のもの。今季のソフトバンクは、戦力が比較的拮抗している現代野球において通常では考えられない戦績を残しつつあるということだ。
もちろん、今季開幕前から多くの評論家が優勝候補の筆頭にソフトバンクを挙げていた。ただ、ここまでの圧倒的存在になろうとは予想していなかったのではないだろうか。
打率ベスト10に4人、本塁打、打点ベスト5にそれぞれ3人がランクインする強力打線や、他球団なら一軍級の二軍投手陣がウエスタン・リーグの防御率ランキングでベスト4を独占するような選手層の厚さ、離脱する選手がいればすぐにカバーする若手が台頭してくる育成力……などなど、その強さの要因は枚挙にいとまがない。
安定したリリーフ陣が強豪チームを支える
しかし、その強力な打線や先発陣を支えているのは間違いなくリリーフ陣だ。かつての阪神“JFK”の例を挙げるまでもなく、過去の強いチームには象徴的なリリーフ陣がいた。
現在、ソフトバンクの「勝利の方程式」を担うのは、森唯斗、五十嵐亮太、サファテの3人。それぞれの防御率は、森1.65、五十嵐1.31、サファテ0.83といういずれも驚異的な数字である。3人合計の防御率は1.24。これは2007年のJFKが記録した1.51、2013年の巨人リリーフ陣(山口鉄也、マシソン、西村健太朗)の1.13に匹敵する数字。
リリーフが安定しているということは、首脳陣が想定通りのゲーム運びができるということ。ひいては、シーズンもプラン通りに運びやすくなるということだ。また、彼らの存在が野手や先発陣にも安心感を与えることにもなるだろう。終盤までに何点取ればいい、何点に抑えればいい、というリラックスした精神状態が、選手の持てる力を最大限に引き出すことにもなる。
他球団がローテーションに頭を悩ませるところ、逆にメンバーが余っているほどの先発陣や、リーグ最多得点を誇るド派手な打線に隠れがちではあるが、チームに安定感をもたらす強力なリリーフ陣もまた、ソフトバンクの強さの大きな一因だ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)