打ち込まれるケースが多い田沢
ア・リーグ東地区優勝争いの真っただ中にいるボストン・レッドソックス。しかし3年前にチームの世界一に貢献した2人の日本人投手が苦しんでいる。上原浩治が右胸筋のケガから復帰を目指す一方、田沢純一も厳しい投球が続いている。特に右肩のケガから復帰した7月22日以降、速球の威力は明らかに落ちており、成績も右肩下がりとなっている。
●故障前と復帰後の田沢の今季成績
故障前 35試 1勝1敗 防3.62 被打率.215
特に8月7日以降の最近5試合では4イニングで計9失点と復調する気配は全くないといえる。直近の21日のデトロイト・タイガース戦では、直球の平均球速は91.8マイル(約147.7キロ)にとどまり、今季平均の92.9マイル(約149.5キロ)、昨季の平均93.6マイル(約150.6キロ)に比べると、球速面でも大きく数字を下げている。世界一に輝いた2013年以降の4年弱で248試合(2013年はポストシーズンで別に13試合に登板)に登板してきた勤続疲労なのか、それとも7月に痛めた右肩が原因なのか、とにかく投球の軸となる直球が思うように投げられていない印象だ。
IR%も苦戦
このままでは自己ワーストのシーズンとなるのは間違いなさそうだが、防御率などには表れないIR%(走者被生還率)という指標でも苦戦している。IR%というのは、IR(登板時に塁上にいた走者の数)とIRS(その走者のうち登板中に生還した数)から導き出される(=IRS÷IR)。近年、メジャーリーグでは中継ぎ投手の“火消し”の能力を測る指標として重要視されている。この数値が高くても田沢自身の防御率には影響がないが、それだけチームの失点は増えているということだ。
【過去4年の田沢のIR%】
2013年 32.4%
2014年 37.5%
2015年 38.1%
2016年 63.2%(19人中12人が生還)
ご覧のように今季は登板時に塁上にいた走者のうち半分以上を生還させてしまっている。防御率も自己ワーストなら、ピンチの場面でもその役割を全うできていないことがわかる。
実は、田沢は今季オフに自身初となるFAになる。昨季までのような活躍を見せていれば守護神もしくはセットアッパーとして争奪戦になる可能性もあったが、今季の成績、内容を見る限り、大型契約を提示する球団が現れる可能性は極めて低いだろう。
レギュラーシーズンは1か月以上残っており、チームがポストシーズンに進出する可能性もある。当然そこで大車輪の活躍を見せ、再び自身の評価を高めることもできるだろう。しかし、ようやく手にするFAの権利を目前に、アピールする時間はそれほど多く残っていない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)