苦しむ名門、試練の時?
プロ野球のペナントレースも、残すところ1カ月とちょっと。セ・リーグでは広島がついに優勝マジックを点灯させ、25年ぶりのリーグ優勝に突き進んでいる。
一方、パ・リーグではソフトバンクと日本ハムが一騎打ちの様相。優勝をかけた戦いは、最後まで目が離せない状況がつづきそうだ。
ここで、順位表の下の方に目を移してみると、ある異変に気付く。かつての常勝チームが最下位争いの真っただ中にいるのだ。
最下位だけは回避してきた西武も...
セ・リーグは現在、中日が最下位に低迷している。ご存じの通り、谷繁元信監督の事実上の解任から2週間以上が経ったが、チームに浮上する兆しはない。このまま最下位に終わると、“第2次星野政権”の2年目にあたる1997年以来の屈辱を味わうことになる。
中日は1998年から2012年の15年間で、実に14度のAクラス入りを果たしている。最下位に沈んだ屈辱をバネに、強豪チームを築いたという印象が強い。
ところが、2013年に4位に転落すると、14年と15年はともに5位。もはや暗黒時代に突入したと言っても過言ではないだろう。
また、パ・リーグでは西武が“らしくない”位置にいる。最近こそ8試合で7勝1敗と好調ながら、最下位のオリックスとは4.5ゲーム差の5位に低迷。西武が最後に最下位に終わったのは、所沢移転1年目の1979年のことだ。
その後、西武は1982年から92年の11年間で実に8度の日本一に輝くなど、巨人のV9にも匹敵する一時代を築いた。2007年以降は4度のBクラスを経験するなど低迷はしているものの、最下位だけはどうにか免れてきた。果たして、今年はどうだろうか...。
メジャーでは地区14連覇を果たしたあのチームが...
強豪チームの衰退は、日本に限った話ではない。海の向こうメジャーリーグでも“異変”が起こっている。
ナ・リーグでは、アトランタ・ブレーブスの最下位がほぼ確定的。1990年以来で、実に26年ぶりの事になる。しかも「34」もの借金を抱えており、このままのペースならシーズン100敗以上を喫することになりそうだ。
ブレーブスといえば、1991年から地区14連覇を成し遂げた強豪中の強豪(※ストライキでシーズンが打ち切りとなった1994年を除く)。その連覇がついえたあとも優勝争いに加わるシーズンは多く、過去25年間ではニューヨーク・ヤンキースと並ぶ常勝チームといえる存在だった。
ア・リーグでも、久々の最下位に転落しそうなチームがある。西地区のロサンゼルス・エンゼルスだ。
4位のオークランド・アスレチックスとの差は僅かに1ゲームであるが、このまま最下位に終われば1999年以来の屈辱となる。
エンゼルスは名将マイク・ソーシア監督の下、2002年にワイルドカードから世界一に輝くと、04年~09年の6年間で5度の地区優勝を達成。昨季は首位と3ゲーム差の3位だったが、今季は開幕から故障者が続出したこともあって苦戦を強いられている。
同地区ライバルであるテキサス・レンジャーズやヒューストン・アストロズに比べると有望な若手選手も少なく、ここから低迷期に陥ってもおかしくはない。
屈辱から這い上がれ
今回はNPBから中日と西武、MLBからはブレーブスとエンゼルスを取り上げたが、ポジティブな話をすると、これらの4球団はいずれも最下位を経験した直後(もしくは数年後)に黄金時代を築いたという共通点を持っている。
まだ今季の最下位が確定したわけではないが、上記の4チームには悔しさをバネにして這い上がった経験がある。今は我慢の時、じっと耐えて名門再建へ――。苦戦が続いたこの4チームのこれからに注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)