コラム

前田健太がドジャースと結んだインセンティブの難しさ

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今季からドジャースでプレーする前田健太
前田健太,

マリナーズと再契約した岩隈とは正反対の契約内容


 ロサンゼルス・ドジャース入りが決まった前田健太投手の契約内容が、さまざまな議論を呼んでいる。

 前田がドジャースと結んだ契約は8年総額2500万ドル(約29億5000万円)で、1年平均は約313万ドル(約3億7000万円)。ニューヨーク・ヤンキースが田中将大と結んだ7年を上回る日本人最長の契約期間だが、1年平均の年俸はメジャーリーガーの平均395万ドル(約4億7000万円)を下回る。そのかわり、高額のインセンティブ(出来高)を結び、すべてをクリアすれば8年で総額1億620万ドル(約127億円)に及ぶというものだ。

 このオフ、シアトル・マリナーズと再契約した岩隈久志は、年俸1200万ドル(約14億5000万円)、インセンティブが最大250万ドル(約3億円)と前田とは逆の形の契約となっているが、岩隈の契約が一般的なものである。

 交渉前、前田サイドがメジャー各球団に送ったメディカルチェックで異常が見つかったことや、ドジャースは昨季リュ・ヒョンジン、ブランドン・マッカーシーとふたりの先発投手がケガで戦線を離脱したことが今回の契約内容につながったとも言われている。

 アメリカのスポーツサイトでも「奇妙な契約」と報じられたが、日本での実績がメジャーでどれほどのものになるか分かりにくい日本人選手に関しては、ドジャース流の契約が今後増える可能性もあるだろう。

 さて、前田のインセンティブの主な内容だが、報道によれば以下のようになっている。

インセンティブの主な内容
・開幕のロースター(登録枠)に入れば15万ドル(約1800万円)×8年
・1シーズンで15回先発すれば100万ドル(約1億2000万円)×8年
・1シーズンで20回先発すればさらに100万ドル(約1億2000万円)×8年
・1シーズンで25回先発すればさらに150万ドル(約1億8000万円)×8年
→その後、30先発、32先発で150万ドルずつ。
・90投球回で25万ドル(約3000万円)×8年
→その後、10投球回ごとに25万ドルが上乗せされ、200投球回に達すれば75万ドル(約9000万円)。

 つまり、1シーズンで32回先発し、200投球回に達すれば満額のインセンティブを手にすることができる。


32先発、200イニング以上投げた日本人投手は過去に6人


 前田も入団会見で、「勝ち星、防御率もいい数字を残したいが、イニング数を意識してやっていきたい」とコメントしたが、32先発&200投球回はかなり高いハードルだ。昨季、メジャーリーグ全体で32回以上先発した投手は36人。200イニング以上投げた投手は28人。32回以上先発し、200イニング以上投げた投手は25人。32回以上先発し、200イニング以上投げるには、シーズンを通して中4日のローテーションを守り切り、1回の登板である程度のイニングを投げなければ到達できない難しい数字なのだ。

 昨季まで、メジャーリーグで登板した日本人投手は39人いるが、そのなかで1シーズン32回以上先発した経験があるのは、野茂英雄、大家友和、松坂大輔、黒田博樹、ダルビッシュ有、岩隈久志の6人だ。1シーズンで200イニング以上投げた経験があるのは、大家以外の5人である。

 また、野茂と黒田は複数回到達しているが、松坂、ダルビッシュ、岩隈の3人は1度ずつしか経験がない。過去の39人でトータル152回のシーズンを経験しているが、200イニング以上は10回、32先発以上は13回。日本人投手の多くはメジャーでリリーフ起用されるとはいえ、32先発、200イニング以上がいかに厳しい条件か分かるのではないだろうか。

 ダルビッシュや黒田、岩隈のように日本を代表するエースとしてアメリカへ渡る前田が、彼らに続くことができるか、大いに注目だ。

文=京都純典(みやこ・すみのり)
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