コラム 2021.06.04. 06:29

ドアラにマスコット生命の危機…!? 交流戦の「イベント」で起こったハプニング

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戦っているのは選手だけでなく… (C) Kyodo News

交流戦で躍動するのは選手たちだけじゃない


 連日各地で熱戦が繰り広げられている『日本生命セ・パ交流戦』。

 開幕に合わせて展開してきた過去の“交流戦珍事件”を振り返る特集も、今回が最終回となる。




 リーグをまたいで行われる普段とは違った戦いに華を添えるのが、各球団が考え抜いた交流戦ならではの“ファンサービス”。

 中でも張り切っているのがマスコットたちで、全力パフォーマンスやイニングの合間に行う競技アトラクションなど、様々な形で球場を盛り上げてきた。

 今回は過去の交流戦において、試合ではなく「イベントタイム中」に起こった、思わずビックリのアクシデントやハプニングを紹介する。



バック転失敗で「じん帯損傷」


 プレー中に負傷するのは、選手ばかりではない。

 2014年6月21日の中日-ロッテでは、中日の人気マスコット・ドアラがバック転に失敗。“マスコット生命”にかかわる重傷を負った。


 7回裏の恒例行事「バック転タイム」に登場したドアラだったが、この日は着地に失敗した際に右足首のじん帯を損傷。患部をギプスで3週間固定することとなってしまう。

 だが、ドアラは翌22日のロッテ戦にも登場。患部には包帯を巻いた痛々しい姿で、「右足故障中」と書かれた画用紙を手にしてグラウンドに姿を見せた。

 この日のバック転はロッテのマスコット・クールが代役を務め、失敗に終わったが、倒れ込んだクールにドアラが手を差し伸べて労う友情シーンに、両チームのファンから惜しみない拍手が贈られた。


 同25日、「じんたい損傷です」と書かれた画用紙を手に記者会見に臨んだドアラは、「今年の目標『ケガをしない』を達成できずすみません」と肩を落としながらも、「自分の心は折れてません」と引退をキッパリ否定。

 その後についても“登録抹消”はせず、主催試合のグラウンドや各種イベントに引き続き出演することも宣言した。


 そして、8月13日のDeNA戦。

 “名誉の負傷”以来約2カ月ぶりとなるバック転をぶっつけ本番で成功させ、鮮やかな復活を遂げている。


試合前なのに、グラウンドには重機がズラリ


 前日に行われたイベントの撤収作業が遅れたとばっちりで、試合前の打撃練習の時間を短縮する羽目になったのが2015年のソフトバンクだ。


 5月28日、ナゴヤドームでの中日戦を終えたナインは翌29日、名古屋から空路福岡に移動。本拠地・ヤフオクドームでヤクルトを迎え撃つことになった。

 ところが、正午過ぎに球場に到着すると、前日まで行われていた『三代目 J SOUL BROTHERS』によるコンサートの撤去作業の真っ最中。ナインが目を白黒させたのは、言うまでもない。

 当初は午前11時に引き渡しの予定が、午後2時20分からフリー打撃が始まるというのに、グラウンドには4台のクレーンと大型トラック、フォークリフトに“占領”されたまま。イベント会社が作業時間を読み違えたことが原因だった。


 球団の興行担当者は「通常は撤収日を設ける。試合の前日に(コンサートを)やったのは初めて。むこう(イベント会社)ができますとのことだった」と説明したが、ダイエー時代の2000年にも日本シリーズ期間中にドームを別の団体に貸し出していたため、“ON監督対決”が変則日程になったことがあった。事情はどうあれ、この反省が生かされていないのは、いただけなかった。

 この結果、選手たちのフリー打撃は午後3時過ぎまで遅れ、通常1人10分の打撃時間を8分に削減。それでも、この日のホークス打線は試合前に十分打ち込みができなかったにもかかわらず、内川聖一と李大浩の連続アーチなど、計4発の本塁打攻勢で7-4と快勝。

 打棒爆発は「負けると、球団の方にも予定を組んだ方にも申し訳ない」(内川)とナインが発奮した結果だった。

 ハンデを乗り越えての快勝に、王貞治球団会長も「あんなのはハプニングじゃない。試合がやれりゃいいんだ。昔は天候が悪くて打撃練習なしでもやっていた。そのせいには絶対にしなかった。とにかく勝ちゃいいんだ」と満足そうだった。


「ホットドッグレース」終了後に…


 最後は、イニングの合間に行われるはずのアトラクションが突然割り込み、試合が中断する本末転倒の珍事が起きたのが、2017年5月31日のソフトバンク-中日だ。


 3点リードのソフトバンクは、3回二死一塁の守りで、石川柊太が大島洋平に2ストライクから150キロの直球でファウルチップを打たせると、ボールは捕手・甲斐拓也のミットに収まった。飯塚富司球審が右手を上げる。三振でスリーアウトチェンジ…と思われた。

 直後、グラウンドで3体の着ぐるみが出場するアトラクションの「ホットドッグレース」が始まり、勝てばグッズが割引になるグッズマンが優勝。球場内の大型ビジョンには、割引販売の告知が映し出された。

 ところが、次の瞬間、告知は取り消され、グラウンドでは、終わったはずの中日の攻撃が再開されるではないか。一体どうなっているのだろうか…?


 実は、大島がファウルチップした際に、石川の投球がボークと判定されていたのだ。

 投球後、真鍋勝巳二塁塁審から「(石川の)静止時間が短い」とアピールがあり、飯塚球審がボークを宣告したときには、すでにレースが始まっていたため、プレーを中断せざるを得なかったというしだい。

 アトラクション終了後、一塁走者・京田陽太が二進し、二死二塁でプレー再開。打ち直しの打席となった大島の右前安打で1点が入ったあと、次打者・荒木雅博が左飛に倒れ、今度は本当にスリーアウトになった。

 試合はソフトバンクが7-2と快勝。6回2失点の石川は、育成を経て4年目でのプロ初勝利。ボークに試合中断のダブルハプニングも加わり、一生思い出に残る日になったことだろう。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
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