コラム 2021.09.20. 06:55

史上最年少100号の村上宗隆、プロ1年目と変わらぬ思い「チームに貢献」貫く【夢追うツバメたち】

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通算100号本塁打を放った村上宗隆とつば九郎<代表撮影>
2021.09.19 17:30
東京ヤクルトスワローズ 5 終了 1 広島東洋カープ
神宮

第22回:勝利への執念と100本のアーチ


 まだ明るさの残る神宮の空へ、100本目のアーチを描いた。

 ヤクルトの村上宗隆が、19日の広島戦(神宮)でプロ野球史上最年少での通算100号本塁打を達成した。1989年に清原和博(西武)が21歳9カ月で樹立した記録を塗り替える21歳7カ月での到達だ。

 試合後「両親が見に来ていたので、僕が打たないと帰らないかなと思ったので、打てて良かったです」と話した村上。

 かつて、村上に父親のことについて話を聞いたとき「生活面でもいろいろ指導を受けてきたので、すべては今に生きているのかなと思います」と語っていた。

 そんな父の前で放った節目の一発は「自分の中でも一番印象に残っている」というプロ第1号と同じ広島戦。ライトスタンドへのアーチだった。

 村上は2018年9月16日の広島戦(神宮)で一軍に初昇格。本拠地のツバメ党の前で、プロ初打席初本塁打という鮮烈なデビューを飾った。
 
 この前日、ヤクルトの二軍施設がある戸田で村上を取材した際「チームに貢献することが一番だと思っています。チームが勝つことに協力したい」と語り、「早く一軍に上がって、ヤクルトのリーグ優勝・日本一に貢献できるように頑張りたい」と、並々ならぬ決意を口にしていた。

まだ一軍経験のなかった18歳は、プロ1年目から「チームが勝つこと」を第一に考えていた。

自分のバットでチームを勝利に導くことをはっきりと宣言し、翌2年目には高卒2年目以内で最多となる96打点をマーク。本塁打でも中西太(西鉄)の36本塁打に並ぶ記録を打ち立てた。

3年目には全試合で4番を務め、「チームの4番なので、何とかチームに貢献できるように」と、4番に座りチームを引っ張っていく意識がさらに強くなった。

「自分が成長する中でこれからチームも一緒に勝てるように頑張りたいなと思います」

今季はチームを勝たせられる4番へ――。打席のときだけではない。守備のときはピンチの場面でマウンドの投手に歩み寄り、声かけをする姿がある。また、ベンチでも率先して声を出し、仲間を鼓舞する姿勢が印象的だ。

チームが優勝争いを繰り広げている中、中心選手としての自覚と勝利への執念がみなぎっているのがわかる。


通算100号は「通過点」


村上は通算100号が目前に迫った段階で「打てればすごく良いですけど、それ以上のことが目標なので、そこは通過点かなと思います」と話していた。さらなる高みへと自分を押し上げ、チームの勝利に貢献しようとする思いは、プロ1年目から変わっていない。

 二軍監督時代から村上の成長を間近で見てきた高津臣吾監督は、「(村上が)入って来たときの2月の西都キャンプを見たときに、必ずすごい選手、すごいホームランバッターになるというのは思っていました」と、チームの主力としての期待は当時から大きかったと話す。

 同じく二軍コーチ時代から村上を知る松元ユウイチ打撃コーチは、例え凡退しても気持ちを切り替えられる強さは「1年目から継続しているところ」だとし、精神面での強さを村上の特長のひとつに挙げた。

 今夏の東京五輪では侍ジャパンに選出され、決勝戦では一発を放って金メダル獲得に大きく貢献した。日の丸を背負う重圧にも負けない精神力。ペナントとは違う緊張感の中で培った経験は、村上をさらに大きく成長させたはずだ。

 ヤクルトに戻り、シーズン再開後は優勝へ向け負けられない戦いが続いている。村上の1打席、1打席が大きな意味を持つ。1年目で語った「リーグ優勝・日本一」に貢献するという思いを、結実させるときがやってきた。

取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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