コラム 2020.12.14. 07:09

来年こそは…「都市対抗」の舞台で意地を見せた“ドラフト指名漏れ”選手たち

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TDK・小木田敦也選手 [写真提供=プロアマ野球研究所]

今年は“冬の大一番”


 11月22日から12日間にわたって東京ドームで行われた、『第91回都市対抗野球大会』。いつもの夏季ではなく、冬の開催となった異例の戦いは、Honda(狭山市)が攻守に安定した戦いぶりを見せ、11年ぶりの優勝を飾った。

 社会人では唯一の全国大会となったこともあってか、例年以上にレベルの高いプレーが多い印象を受けた今年の「都市対抗」。今回は、残念ながら今年のドラフト会議では指名を見送られたものの、来年再びドラフト戦線に浮上してくることが期待できる選手をレポートする。


打者を圧倒したTDK・小木田敦也


 短いイニングでの登板ながら、投手で圧倒的な力を見せたのが小木田敦也(TDK)だ。

 1回戦の日本新薬戦。1点ビハインドの8回から登板すると、1番から始まる相手の上位打線を相手に2回をパーフェクトに抑え込んで見せた。

 ストレートの最速は153キロをマークし、コンスタントに150キロ前後のスピードがある。そのストレートをコーナーいっぱい、低めに集める制球力も見事だ。

 さらに、カーブやスライダー、カットボールを同じフォームで投げ分け、変化球同士で緩急をつけられるのも非常に大きい。フォームは少し菅野智之(巨人)に雰囲気が似ており、バランスの良さと躍動感は申し分ない。都市対抗予選のピッチングも圧倒的で、上位指名があっても不思議ではなかったレベルの投手だ。


 ドラフト指名が見送られた理由としては、今年最初の公式戦がドラフト会議の3週間前と直前で、球団側が十分な視察ができなかったこと、また予選の後に少し肩の違和感があったことが考えられるが、この日を見る限りコンディション的な不安は全く感じられなかった。

 来年は高校卒5年目の23歳となるが、まだまだ若いうえ、先発とリリーフの両方がこなせる能力の高さは貴重。この状態を1年間維持することができれば、かなりの確率でプロ入りが見えてくる。


NTT西日本・大江克哉も好投


 同じく有力候補と見られていた大江克哉(NTT西日本)も、指名が見送られたショックを感じさせない堂々とした投球を見せた。

 2回戦のHonda鈴鹿戦で2回途中からマウンドに上がると、相手の強力打線を8回まで本塁打の1点に抑える好投。続く準々決勝では、不運な内野安打と後続が打たれたこともあって4失点を喫したが、2試合連続のロングリリーフで見事なピッチングを見せた。


 以前と比べて、軸足に体重を乗せる時間が長くなり、体重移動にスピードが出てボールに勢いが出てきた印象を受ける。体つきは社会人にしては細く、甘く入ると遠くへ飛ばされるという課題はあるとはいえ、最速151キロをマークしたストレートの勢いは申し分なかった。

 縦に鋭く変化するスライダーとチェンジアップが低めに集まり、変化球のレベルも高い。体力面の強化と調子の波を小さくすることができれば、来年のドラフトで指名のチャンスは十分ありそうだ。


強烈なインパクトがあったトヨタ自動車・嘉陽宗一郎


 投げているボールのインパクトという点で圧倒的な印象を残したのが、嘉陽宗一郎(トヨタ自動車)だ。

 高校時代から大器と評判の大型右腕だったが、亜細亜大では年々ストレートが走らなくなり、4年時には140キロ前後という状態。社会人に進んでからも、いまひとつ目立たないシーズンが続いたが、3年目の今年は少し肘を下げたことでフォームの流れがスムーズになり、都市対抗予選ではリリーフとして好投。

 本大会では初戦で敗れたこともあって2イニングの登板にとどまったが、打者6人をパーフェクトに抑えて4奪三振と圧巻の投球を見せている。


 昨年までは140キロ台前半だったストレートが今大会では最速152キロをマーク。右打者のアウトローへのボールはまさに糸を行くようなという表現がピッタリ当てはまり、コントロールも安定している。

 来年で26歳となるが、リリーフタイプの投手が欲しい球団は引き続きリストアップする可能性が高いだろう。


 その他の投手では、自己最速の151キロをマークした青野善行(日立製作所)、肩の違和感から復調途上ながら持ち味の馬力を見せた森井絃斗(セガサミー)、今年に入ってスピードを上げてきた高椋俊平(西部ガス)なども、引き続き候補となりそうだ。


野手で強い印象を残した2人


 一方、野手で強く印象に残った選手と言えば、向山基生(NTT東日本・外野手)と福永裕基(日本新薬・二塁手)の右打者2人である。

 向山はセンターとして決勝までの5試合に出場。ヒット数は5本だったものの、そのうち3本が長打で、2回戦ではDeNAから5位指名を受けた池谷蒼大(ヤマハ)のストレートを完璧にとらえてレフトスタンドまで運んで見せた。

 少し柔らかさには欠けるが、ヘッドスピードとインパクトの強さは社会人の中でも一際目を引く存在だ。また、大柄ながら脚力も備えており、センターの守備も高レベルである。即戦力の右打ち外野手が欲しい球団にはうってつけの人材と言えるだろう。


 福永は4番として4試合に出場。1回戦では154キロをマークした鈴木大貴(TDK)からレフトへ決勝の2ラン、2回戦でも試合を決定づける3ランを右中間へ叩き込んでみせた。

 大学時代はどちらかというと広角に打ち分ける上手さが光る選手だったが、体つきが一回り大きくなったことで長打力も確実にアップしている。セカンドの守備も高レベルだ。二塁を守れる右の強打者タイプは貴重だけに、来年もドラフト候補として注目を集めることになるだろう。


 そのほかでは、優勝したHondaのトップバッターとして打率.462/出塁率.708の成績を残して打撃賞に輝いた吉田叡生(Honda)、故障明けで出場機会は限られていたが、さすがのミート力とスピードを見せた市根井隆成(セガサミー)、スピードとパンチ力の両方を発揮した長野勇斗(Honda鈴鹿)などの外野手も目立った。

 左打ちの社会人外野手はプロ入りのハードルは高いが、来年以降も注目してもらいたい選手である。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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