コラム

いざ出陣、侍ジャパンの新四番・山川穂高

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12日に行われた日本ハムとの練習試合で本塁打を放ちハイタッチを交わす山川穂高

白球つれづれ~第37回・覚醒した「おかわり2世」


 1年前の今頃は秋季キャンプで汗と泥にまみれていた。まだ、一軍の座すら約束されていない未完の大器。それが今では新生・稲葉ジャパンの四番として期待を一身に集める。まさに、今年一番ブレークした「シンデレラボーイ」の誕生だ。
  
 16日に開幕するアジアプロ野球チャンピオンシップ。3年後に迫る東京五輪を視野に入れてメンバー構成は、入団3年目以内か24歳以下の若手中心。そこにオーバーエージ枠として招集されたのが25歳の山川穂高である。侍ジャパンの新監督に就任した稲葉篤紀が打線の柱として真っ先に指名すると、12日に行われた対日本ハムとの練習試合では、早速バックスクリーン最上部を直撃する140メートル弾で応えた。

 2013年のドラフト2位で西武入団。当時の体重は108キロと記録にある。富士大時代には長距離砲として鳴らし、在学時からライオンズのホームランキングである中村剛也の打撃フォームの研究を続けていた。体形もそっくりならフレースタイルもそっくり。いつしか「おかわり2世」の愛称が定着した。

 ところが、今季途中からは本家のおかわり君をしのぐ爆発ぶり。開幕こそ一軍で迎えたが打撃不振ですくさまファーム落ち、このままならいつものシーズンと変わらなかったが7月に再び昇格を果たすと大変身を遂げた。夏以降の出場ながら78試合で23本塁打、61打点に打率も.298をマーク。中でも8月2日の楽天戦では3打席連続本塁打を記録するなどチームの躍進を支え、9月に入ると中村やE・メヒアを抑えて四番の座におさまった。とりわけ長打率の.661は250打席以上の選手では両リーグトップ。これだけの数字を残せば稲葉の目にもとまるだろう。


2世からジャパンの主砲へ


 西武の主力打者にはフルスイングのの系譜がある。清原和博、秋山幸二に現役なら前述の中村にメヒア。さらに浅村栄斗、森友哉。山川もこの範疇にいる。素振りひとつをとっても山川流は独特だ。普通にフルスイングのした後のフォロースルーがさらに天に向かって突き上げていく。

 「左手の甲を返すのではなく立てるイメージ。より大きく力強いスイングを意識している」とは打撃コーチ・嶋重宣の解説だ。

 覚醒の大きなポイントに山川自身は前メッツ・青木宣親との出会いをあげる。プロ1年目のオフに青木と自主トレを共にした際のアドバイスを今年になって思い出した。

 「自分は今まで左翼方向に放り込むイメージだったけど、青木さんに直球待ちのセンター返しの意識を教わった。これを実践してみると多少差し込まれても右に打てるし、広角にホームランを打てるようになった。左肩の開きも抑えられて変化球を見極められるようになったので打率も上がってきました」

 多くの打者はツーストライクに追い込まれると、どんな球にも対応できるようコンパクトなスイングに切り替える事が多いが山川の場合はフルスイングを崩さない。それでも結果を残せるようになったのは青木のセンター返し理論だった。安打製造機が未完の長距離砲に一味のスパイスを加えたのだ。

 山川の球歴を見ていくと、意外にも?日本代表と共に歩み続けている。大学2年の日米大学を皮切りにアジア野球選手権(3年)、東アジア競技大会(4年)と日本代表に選出され、プロでも2015年の侍ジャパン大学日本代表対NPB選抜に出場。しかもこの4大会中、3つの大会で貴重な本塁打をマーク。すでにこの頃からジャパンの申し子であったのかもしれない。

 おそらく今大会では3番・上林誠知(ソフトバンク)と5番・近藤健介(日本ハム)に挟まれる形で出番がやってくる。他のメンバーを見渡しても長打力と勝負強さでは群を抜いている。おかわり君のそっくりさんから全国区の大砲へ。山川、勝負の第2ラウンドが始まる。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお) 
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