コラム 2021.05.22. 10:59

かつて2度の甲子園制覇…古豪復活へ!大分・津久見を支える“投打の柱”

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大分・津久見高の“投打の柱”にフォーカス [写真提供=プロアマ野球研究所]

川崎憲次郎や鉄平を輩出した名門校


 東海大相模の優勝で幕を閉じた今年の「春のセンバツ」。

 決勝戦で東海大相模に敗れたものの、春夏通じて初の決勝進出を果たし、2年ぶりに開催された夢舞台を盛り上げたのが大分・明豊だった。




 今や高校野球ファンの間でもすっかりお馴染みの強豪校。ここ数年の九州の高校球界を牽引している存在と言っても過言ではない。

 しかし、オールドファンに大分県の強豪校を問えば、このチームの名前が挙がってくるのではないか。1967年春と1972年夏、2度の甲子園優勝を果たし、川崎憲次郎(元ヤクルト)や鉄平(元楽天)など、多くのプロ野球選手を輩出した津久見である。

 甲子園出場は川崎がエースとして活躍した1988年夏以降遠ざかっているが、昨夏の大分県・独自大会で優勝。今春の県大会でも準決勝まで進出した。今回は、“古豪復活”を担う投打の柱2人について、春の九州大会のプレーをもとに紹介したい。



▼ 林田夢大(津久見) 
・投手 
・170センチ/70キロ 
・右投右打

<2021年・春季九州大会成績>
2試(14.2回) 防御率1.23 WHIP1.16
奪三振16 被安打15 与四死2 失点2(自責2)
奪三振率9.82 被安打率9.20 四死球率1.23

<主な球種と球速帯>
ストレート:135~142キロ
カーブ:105~110キロ
スライダー:116~124キロ
チェンジアップ:110~115キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.27秒


▼ 法輪大道(津久見)
・外野手兼一塁手 
・182センチ/75キロ 
・右投右打

<2021年・春季九州大会成績>
10試 率.667(9-6) 本塁打1 打点1
11打席 二塁打1 三塁打0 四死球2 盗塁3
出塁率.727 長打率1.111 OPS1.838

<各塁へのベスト到達タイム>
一塁到達:4.50秒
二塁到達:8.79秒


3秒程度の投球間隔でどんどん投げ込む


 旧チームから主戦として活躍し、昨年夏の代替大会でも大車輪の活躍を見せたのがエースの林田だ。

 九州大会初戦の鹿屋中央戦では5回からマウンドに上がり、最終回に1失点を喫したものの、5イニングを7奪三振の好リリーフでチームの勝利に貢献した。

 翌日の福岡大大濠戦では延長13回タイブレークの末に敗れたが、4回途中からのロングリリーフでわずか1失点と安定感抜群のピッチング。170センチ・70キロと投手としては小柄な部類に入るが、とにかく目立つのがテンポの良さだ。


 捕手からの返球を受け取るとすぐにモーションに入り、3秒程度の投球間隔でどんどん投げ込んでくる。このため、打者はどうしても構え遅れることが多い。

 テンポ良く投げられるということは、それだけコントロールに自信がある表れであり、九州大会の2試合でも制球が乱れる場面は皆無だった。


 ストレートのアベレージは130キロ台中盤から後半。数字的には少し物足りないが、それを補っているのが緩急の使い方の上手さである。

 特に素晴らしいのが100キロ台のカーブ。ストレートと変わらない鋭い腕の振りで、一度浮いてからブレーキ鋭く落ちるボールで、コントロールも安定している。

 このカーブでストライクをとり、さらに110キロ程度のチェンジアップもしっかりと低めに集めることができる。近年はスライダーを中心に組み立てる投手が多いだけに、カーブで組み立てられる林田の投球はある意味で新鮮だった。

 九州大会ではいずれもリリーフでの登板だったが、延長タイブレークにもつれ込んだ福岡大大濠戦では100球を越えても安定した投球を見せるなど、スタミナも十分だ。


全国屈指の左腕から4安打を放つ


 一方、野手の中心選手が1番を任されている法輪である。

 まず、鹿屋中央戦。1回表にレフト前ヒットを放つと、続く打者の初球でいきなり盗塁。続く2打席は四球を選び、第4打席ではセンター前に弾き返すなど、2安打・2四球で計3盗塁。トップバッターとしての仕事を見事にこなした。


 さらに、素晴らしい活躍を見せたのが福岡大大濠戦だ。

 選抜高校野球でも好投を見せた、全国トップクラスのサウスポーである毛利海大を相手に4安打をマーク。第5打席には、先制のホームランをレフトスタンドに叩き込んだ。

 少し細身だが、182センチの長身で大きく構えてゆったりとタイミングをとり、巧みなリストワークできれいに引っ張るバッティングが持ち味だ。

 わずかにアウトステップする点は気になるものの、ステップも慎重で粘りがあり、緩いボールにもしっかり対応できる。筋力がつき、体の回転に鋭さが出てくれば、リストの強さがさらに生きてくるだろう。


 林田はストレートの速さ、法輪は打つ以外のプレーに課題があり、高校から直接プロというタイプには見えないが、ともに高い潜在能力を秘めた選手であることは間違いない。

 卒業後の次のステージでフィジカル面を鍛え、プレーに凄みが出てくれば、将来のプロ入りも十分に期待できる。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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