98年の石井琢は第1戦の初回にセーフティー
広島と日本ハムの日本シリーズが22日、マツダスタジアムで開幕する。広島が日本一となれば84年以来32年ぶり、日本ハムが10年ぶりとなる。トップバッターに注目すると、広島はCS通算打率.833を記録した田中広輔、日本ハムは打率リーグ2位の.314を記録した西川遥輝が務める。
過去には“トップバッター”がシリーズの流れを大きく呼び込んだというケースもある。98年の横浜と西武の日本シリーズがそうだ。38年ぶりにリーグ優勝した横浜の本拠地・横浜スタジアムで行われた第1戦の1回裏、現在広島の打撃コーチを務める1番の石井琢朗が打席に入る。石井琢は、西武先発・西口文也が投じた初球バントの構えを見せるもストライク。2球目のストレートを三塁・鈴木健の前に転がし、セーフティーバントを決める。
続く波留敏夫の3球目に、一塁走者の石井琢は二盗を成功。石井琢が西武バッテリーを揺さぶると、3番・鈴木尚典のライト前タイムリーで先制のホームを踏んだ。さらに3回には四球で出塁しに二盗を成功させると、波留、鈴木尚、ローズの3連打で3得点。攻撃の手を緩めなかった横浜はこの試合9得点を挙げ大勝。
第2戦も初回にヒットで出塁し盗塁を決め、鈴木尚のタイムリーで先制のホームを踏むと、5回にはソロ本塁打を放つ活躍ぶり。このシリーズで打率.364(22-8)の活躍を見せ、38年ぶりの日本一に大きく貢献。自身も日本シリーズ優秀選手賞を獲得した。
05年の西岡も意表を突くバント
05年の阪神対ロッテの日本シリーズでも、当時ロッテの1番打者・西岡剛(現阪神)のプッシュバントでシリーズの流れを変えた。ロッテの本拠地・千葉マリン(現QVCマリン)で行われた第1戦、ロッテが初回に先制するも、5回に藤本敦士の犠飛で阪神が同点に追いついた。
その裏、ロッテは渡辺正人がレフト前ヒットに出塁。ここで打席には西岡。西岡は1ストライクからの2球目、井川慶が投じたストレートを一塁方向へプッシュバント。これが決まり、一塁ベース上で西岡はガッツポーズ。その後、今江敏晃、サブローのタイムリーで3点を奪い勝ち越しに成功すると、これで勢いに乗ったロッテは10-1で第1戦を大勝。
西岡のプッシュバント、今江のタイムリーで勢いづいたロッテは1度も敗れることなく、4連勝で日本一を達成した。今江がシリーズ新記録となる8打数連続ヒットの活躍が目立ったが、西岡のプッシュバントが阪神バッテリーに精神的なダメージを与えたといえるだろう。
99年の関川は大ブレーキ
一方でトップバッターがブレーキとなり、日本一を逃したケースというのもある。99年に行われたダイエー(現ソフトバンク)と中日の日本シリーズだ。この年、3番打者として自己最高となる打率.330、4本塁打、60打点の成績を残しリーグ優勝に貢献した当時中日の関川浩一がそうだ。
日本シリーズでは1番を務めた関川だったが、第1戦・工藤公康、城島健司のバッテリーに翻弄され4打数0安打に抑え込まれる。チームも工藤から13個の三振を奪われるなど、チャンスらしいチャンスは作れず完封負け。
初戦でダイエーバッテリーに手玉に取られた関川は2戦目以降もヒットなし。ようやく第5戦、シリーズ20打席目でライト前に待望の初安打を記録。続く打席でも安打を放ったが、この試合でチームは敗れ、ダイエーが日本一となった。ちなみに関川はこのシリーズ打率.095(21-2)に終わっている。
チームに勢いを与えるためにも、トップバッターの出塁がカギを握る。広島・田中、日本ハム・西川は出塁し、得点圏で多くポイントゲッターに回すことができるか注目だ。