繰り返してはならない「プレミア12」の悲劇...
3月5日と6日に行われた侍ジャパン強化試合のベンチで懐かしい風景を見た。頬に手をあてて立つ、権藤博投手コーチの姿だ。
言わずと知れた、98年・横浜ベイスターズ(現DeNA)を38年ぶりの日本一に導いたときの監督。監督経験は横浜での3年間だけだが、現役引退後、1973年に中日の二軍投手コーチに就任して以来、近鉄やダイエーでも投手コーチを務め、中日や近鉄のリーグ優勝に貢献している。
来年開催されるWBCに向けて強化を図る侍ジャパンは、この1月から新たに権藤博氏と斎藤隆氏、2名の投手コーチ就任を発表した。
まだ記憶に新しい、昨年の「プレミア12」準決勝・韓国戦での逆転負け。7回まで韓国打線を1安打無失点に抑えていた大谷翔平を代える継投にでるも、8回を抑えた則本昂大がイニングを跨いだ9回に1点を返され、なおも無死満塁。
ここで代わった松井裕樹が押し出しの四球を与えて1点差に迫られると、その状況で送り込まれた増井浩俊も失点し、9回に一挙4点を奪われて逆転を許してしまった。
この大会を通じてセットアッパー、抑えの役割を明確にしないで戦っていたことが、最後の最後で裏目にでる形となってしまった侍ジャパン。今回の投手コーチ2名体制は、「プレミア12」で露呈したこの課題を、WBCまでにクリアするためと言えるかもしれない。
経験豊富な権藤氏と選手に近い斎藤氏の両輪
侍ジャパンのコーチ就任以降、権藤コーチは各球団のキャンプをまわり、監督として、コーチとして、また解説者、評論家としても磨いてきた眼力で選手を視察している。
監督、コーチとしての権藤氏は、選手の自主性を尊重するのがモットー。登板過多で肩を壊してしまった現役時代の自らの経験に基づいたピッチャーの立場に寄り添う指導法で知られ、恩師と慕う選手も多い。
しかし一方では、放任ともいえる言動に反発する選手がいたことも事実だ。その点でいえば、各チームのエース級が集まっている侍ジャパンのようなチームには適任なのかもしれない。
また、ともに投手コーチをつとめる斎藤隆氏とは、横浜でともに戦った経験があり、意思疎通の部分に問題はないだろう。そして、斎藤氏は昨年まで現役だったということで、権藤氏とは違う面での指導も期待できそうだ。
WBCの本大会まであと1年。選手だけでなく、チームを作っていく監督コーチ陣の手腕にも注目していきたい。