ハイレベルな春を勝ち抜いた沖縄尚学エースの今
「球春到来」――。
プロ野球キャンプインの時によく使われるこのフレーズだが、オープン戦も始まり、暦の上でも春となるこの時期になると、より実感がわいてくる言葉だ。
プロ野球開幕も待ち遠しいところではあるのだが、その前に選抜高校野球大会が20日に開幕する。
夏の大会のように一発勝負の地方予選ではなく、昨年秋の大会成績をもとに選考された少数精鋭「32校」による戦いは、春開催という気候の面からも、夏の大会より質の高い試合になりやすいという見方もある。
そんな理由からなのか、夏の大会出場はないものの、センバツで活躍し、その後プロになった選手というのも少なくない。
敢えて進学を選び、「大学No.1」の称号を手に入れた男
2008年の春、沖縄尚学を9年ぶり2度目の優勝へと導いた東浜巨(ソフトバンク)もその一人だ。
その年の夏の大会では県大会決勝で敗れ、甲子園に戻ってくることはできなかったものの、センバツの5試合で防御率0.66という圧倒的な成績が認められ、高校卒業時にもプロからの誘いを受けた。
高卒でのプロ入りは志望せず、亜細亜大へと進学した後も、東都大学リーグで1年から活躍。その年の新人賞獲得からはじまり、最高殊勲選手を2回、ベストナインは4回受賞した。
大学No.1ピッチャーと言われた2012年、ドラフトの目玉として注目を浴びた右腕は、ソフトバンク、西武、DeNAの3球団が競合した末に、ソフトバンクが交渉権を獲得。九州の地でプロとしてのキャリアをスタートさせた。
即戦力として期待された1年目だったが、4月のプロ初登板・初先発となったオリックス戦では初回5失点で3回途中降板。1週間後の楽天戦でも、5回6失点で降板。翌日に二軍落ちという悔しいスタートとなる。
一軍復帰した9月のロッテ戦でようやくプロ初勝利を掴み、最終的には3勝をあげるが、高卒ながら10勝を挙げた藤浪晋太郎(阪神)のや、13勝を挙げた菅野智之(巨人)といった同期入団の投手と比べると、物足りなさの残るルーキーイヤーだった。
2年目の2014年も、開幕直後は先発ローテーション入りも狙えるかと思われたが結果が出ず、一軍の壁の高さを痛感させられる。
それでも、チームが日本一になったこの年、CSファイナルステージや日本シリーズでの登板も経験。日本シリーズでは優勝に王手をかける3勝目の試合でホールドを記録するなど、1年目同様シーズンの最後にかろうじて爪痕を残した。
真価が問われる「4年目」のシーズン
結局プロ入りからこれまでの3年間、毎年一軍での登板機会こそ掴んでいるものの、通算の勝ち星はわずかに6。先述の2人を含め、順調にキャリアを積んでいる2012年の“ドラ1組”からは大きく水をあけられている印象だ。
多彩な変化球をコースよく投げこみ、打たせて取る投球が持ち味の東浜。ただし、それと同時にその球威がプロで通用するのかという話は1年目から指摘されていた。
しかし、プロ入りも可能だった高卒時に、数ある大学の中で亜細亜大学への進学を自ら選択。文武両道を目指して練習時間や内容を突き詰め、4年間かけて大学No.1ピッチャーへと登りつめた男が、この程度で終わるわけがない。
今年がプロ入り4年目。大学時代と同じく、「答えを出す年」となることを期待したい。