逆方向への打球が急増、強い当たりは減少傾向に...
今季からマイアミ・マーリンズでプレーしているイチロー。
ここまでは94試合に出場し、打率.243、1本塁打、14打点の成績。安打数も54本と、このままではシーズン100安打も厳しい状況だ。“第4の外野手”という位置付けとはいえ、さすがのイチローも衰えを隠せない数字である。
打率や安打数以外でも、数字を大きく落としている。メジャーに関するデータサイト「fangraphs」によれば、引っ張った打球が全体の22.0%、センター方向が37.6%、逆方向が40.3%といった打球方向が出ている。
引っ張った打球の割合はメジャー14年目で最も低く、逆方向への割合は最も高い。広角に打てることがイチローの長所でもあるが、引っ張った打球がこれだけ少ないのは速球に対応が遅れている、または今まで通りのポイントで打ててないという可能性があるだろう。
もうひとつ、数字の面でイチローのバッティングに変化が見られるのが打球の強さだ。弱い打球の割合が全体の30.5%、中間の当たりが60.5%、強い当たりが8.9%となっている。
強弱は客観的評価に過ぎないが、強い当たり8.9%はメジャー14年目で初の一ケタとなる最低の数字だ。強い当たりが減り、引っ張った打球が少ないことが打率の低下につながっていると見ることができる。
さすがと思わせる一面も…!
強い打球が減ったことは、ゴロの増加にも表れている。一般的に、強い打球はライナーかフライが多い。弱い打球が増えたイチローの今季のゴロとフライの割合GB/FB(※)は4.24。フライよりゴロのほうが4倍以上多くなっている。これもメジャー14年目で最も高い割合だ。
メジャーのシーズン最多安打を更新した2004年のGB/FBは3.55と今季に次いで高いものだったが、2004年は弱い当たりが16.1%しかなかった。引っ張った打球も33.7%あり、比較的強く引っ張ったゴロで内野の間を抜き、ヒットを量産していた。
と、ここまで衰えを表すような数字ばかりを並べたが、さすがイチローと思わせるものもある。昨季、メジャーのキャリアではワーストだった三振率17.7%が、今季は13.3%まで下がっている。強い打球は打てなくても、ミート力はまだ健在だ。
イチローも10月で42歳になる。40歳を過ぎると年齢がネックとなって契約の機会が減り、契約できたとしても起用数は少なくなる。
しかし、そんな中でもイチローは昨シーズン100安打以上を記録した。2005年から昨季までの10年間では、41歳以上のシーズンで100安打以上記録したのはイチローのほかに4人しかいない。
メジャー最年長野手としてプレーするイチロー。衰えは見られるが、その中でもどのようなイチローらしさを見せてくれるか。メジャー通算3000安打、日米通算ながらピート・ローズの4256安打という記録への挑戦とともに、稀代のヒットーメーカーに注目したい。
(※)GB/FB
打球のうちゴロの総数をフライの総数で割り、ゴロとフライの比率計る指標。ゴロとフライが同じ数の場合、GB/FBは1となり、数値が大きくなるほどゴロの割合が高くなる。一般的にスラッガータイプの打者はフライの割合が高い。
文=京都純典(みやこ・すみのり)